研究課題
本研究の目的は、清朝治下の東トルキスタン・オアシスにおける文書行政について体系的に検討し、清朝統治の実態解明に取り組むことにある。当該年度は、日本語論文1編、英語論文1編を公表した。前者は、清朝の満洲語文書、及びカザフ首長層が清朝に宛てたテュルク語文書を利用して、1770年代に清朝の対中央アジア不干渉の原則が確定する過程を跡付け、そこに「属人」から「属地」を重視する王朝の体制変化を読み取ったものである。後者では、清朝治下東トルキスタンで成立した、特異な書式・用語を持つテュルク語行政文書について、その存在をはじめて明らかにしたものである。また、当該年度は積極的に国際学会に参加して四つの研究報告を行った。その中で台湾故宮所蔵のコーカンド発信の清朝宛テュルク語文書2件の紹介と考察を行い、本文書の特徴と文書内容から読み取れる当時の中央アジアの通商関係の実態を明らかにした。以上の成果は、本研究課題の目的と密接に関わる内容を持つものである。また、夏期にカザフスタンとウズベキスタンへ出張して史跡調査を実施するとともに、アルマトイ市にある東洋学研究所を訪問し、当研究所の研究との間で研究情報の交換を目的とした座談会を開催した。冬期には北京へ出張し、中国第一歴史档案館において満洲語・テュルク語・漢語の文書史料の調査を実施した。収集した文書史料のうち、ヤルカンド・オアシスのベク官人の履歴を網羅した「ヤルカンド大小ベク履歴冊」(満洲語)については、公刊に向けた翻訳とデータの打ち込みを進めることができた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
James A.Millward, Shinmen Yasushi, and Sugawara Jun (Ed.), Studies on Xinjiang Historical Sources in 17-20th Centuries (Toyo Bunko Research Library 12)
ページ: 185-217
東洋史研究
巻: 第69巻第2号 ページ: 1-34