研究課題/領域番号 |
22720281
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 昇 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (50548667)
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キーワード | 西洋史 / 古代ギリシア / 碑文 / 外交 / アテーナイ / ヘレニズム / エリート / ネットワーク |
研究概要 |
本年度は、まず昨年度に引き続き、先行研究の検討と基礎史料の分析を行った。 とくに、ヘレニズム期のアテーナイ、およびギリシア世界のエリート間の紐帯について、当該期のプロクセノスの事例を調査した。史料は東地中海世界各地から出土する碑文が中心となる。地域毎に整理して刊行される碑文集のあちこちに、ばらばらに納められている事例を拾い集め、また年毎に発行される発掘報告書にも目を配りながら、極力、紀元前三世紀初頭までに、アテーナイ人として外国からプロクセニアー顕彰を受けた事例を悉皆的に調査した。 これまで二年間の検討を通じて、前五世紀(古典期)から前三世紀(ヘレニズム期前半)にかけて、アテーナイ人として、他国からプロクセノス顕彰を受けた事例をピックアップする作業は、かなりの程度整理が進んでいる。 このうち古典期アテーナイの状況に関しては、個々の事例についてプロソポグラフィーをより深く検討し、ある程度の見通しを得たため、前年度までに口頭報告を行った内容を論文にまとめた。論文は査読を経て、現在出版準備中である。そこで明らかにされたことはおよそ以下の通りである。民主政の制度が根付いた古典期のアテーナイにおいても、当該社会のエリートは、海外のエリートと私的な紐帯を保持し、政治的な力をその家柄のうちで保持する可能性があった。しかし国内外の不安定要因から、その特権的な状況を必ずしも保持し得ず、民主政期アテーナイはむしろ社会的変動が大きい社会だったと評価できる。 さらに関連史料を精査する中で、一部の史料について新たな解釈の可能性を見出したため、これについても原稿を英文でまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎データの整理の部分に関しては、当初の目標通り進められている。論文や口頭報告による成果の発表については、ある程度進められているが、刊行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ヘレニズム時代のアテーナイについてさらに事例の整理を進めるとともに、プロソポグラフィーなど、様々な側面から検討を加えていく。また、同時代の他地域の事例にも目を向け、当該期のネットワークの有り様について、多角的な検討を行う。地域に関しては、特にヘレニズム時代に繁栄していた、小アジアエーゲ海沿岸の都市に限定する。
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