研究課題
若手研究(B)
ポワトゥ地方の領主社会を詳細に描いた『コンヴェントゥム』(1030年頃作成)は史実ではなく、架空の紛争の記述を交えて、作成者の利害に適した社会秩序を表現している。口頭伝達に適した形式から、この作品は地域社会へ広く発信され、作成者の政治的立場の強化に貢献し得た。 文字実践の黎明期とされる 11 ・12 世紀の西欧社会において、 記憶の再構築は伝統的な口承伝達と次第に拡大する文字の使用とが相互作用する中で生じた、特有の文字実践の一例である。