本研究はワイマル期ドイツ(1920年代~30年代初頭)のベルリンで様々な政治勢力(ナチス・共産党・共和国擁護派など)が街頭での暴力・プロパガンダ闘争を繰り返していた点に着目し、その実態や各政治勢力の関係を一次史料に基づいて分析し、それらを社会史的な具体相で捉えていくことを目的としている。このテーマに関しては、わが国ではほとんど研究成果のないのに対して、欧米ではかなりの研究が提出されており、2012(平成24)年度はこれらの研究を読み込んだ上で、2010(平成22)・2011(平成23)年度にベルリンの2つの文書館で収集した未公刊史料の分析を進めた。 2012(平成24)年度においては、その成果の一部を公表した。具体的には、まずこれまでほとんど明らかにされなかった街頭闘争組織の一つである「鉄兜団(Stahlhelm)」の労働者獲得活動の分析成果を雑誌論文として発表した。さらに、本研究の中心的課題であるワイマル期ベルリンにおける政治的街頭闘争に関する概観的論文をドイツでの共著書の中で発表した。そこでは、1930年代初頭のベルリンで、ナチス・共産党・社会民主党(国旗団)・鉄兜団が政治的な議会活動と並行して街頭で激しい暴力的闘争を展開し、これに警察の取り締まりが加わって、「暴力の日常化」ともいえる様相に至っていたことを明らかにした。 この点については、プロイセン文化財団国立枢密文書館に保管されているプロイセン内務省の史料、及びベルリン州立文書館にあるベルリン警察本部及び検察関係の史料を用いることでさらに詳細な実証が可能であるが、その量が膨大かつ多岐にわたるため、現在のところその分析・検討を継続中である。このため、2013(平成25)年度にその研究成果を学会発表や雑誌論文を通じて公開する予定である。
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