本研究は、ワイマル期ベルリンの街頭(特に労働者地区)で様々な政治勢力(ナチス、鉄兜団、共産党、共和国擁護派など)が暴力的な街頭闘争を繰り返していた点に着目し、この政治的暴力の実態や、そこでの各政治勢力の関係をドイツの公文書館に保存されている一次史料に基づいて実証的に分析することを目的とするものである。本研究では、1930 年代初頭のベルリンおよびプロイセンにおける街頭闘争の発生状況を明らかにした上で、その原因やワイマル共和国末期の政治状況の中でそれが持っていた意味を検討した。結論として、この闘争が戦闘的な集団の抗争というだけでなく、ワイマル期のドイツ社会における「暴力の日常化」を背景とする現象であった点、さらに「政治的暴力」の視点から見ると、ワイマル共和国からナチス体制への移行は連続性の側面からも捉えることができる点を指摘した。
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