研究課題/領域番号 |
22720289
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
岩本 崇 島根大学, 法文学部, 准教授 (90514290)
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キーワード | 古墳時代 / 青銅器 / 製作技術 / 前方後円墳 / 銅鏡 / 筒形銅器 / 巴形銅器 |
研究概要 |
古墳出土青銅器の製作技術を復元するにあたって、工房跡や鋳型などの具体的な生産を裏付ける事例が未見である現状をふまえるならば、製品に残された痕跡の観察をもとに、分析を積み重ねるという研究姿勢が重要と考える。いっぽうで、製作にかかわる痕跡が基礎報告段階で十分にデータ提示される場合は少なく、それゆえに明確な課題意識のもとに現物を徹底的に観察することが不可欠である。平成22年度に引き続いて、平成23年度においてもできるだけ多くの資料について実物観察をおこなうべく、多数の青銅器を所蔵する博物館等において閲覧調査を継続的に実施した。 平成22年度は日本列島での生産が想定される資料を中心にデータ収集を進めたので、平成23年度においてはとくに中国大陸で生産されたと評価しうる資料をおもな資料化の対象とした。具体的には、中国大陸で類例が多数確認されている事例や、中国の年号をもつ青銅器について閲覧調査を実施し、今後の比較検討に備えた。データの蓄積に際しては、写真撮影と実測図の作成を可能な限り新規におこない、カード化を進めた。その結果、中国鏡において系統性が存在する可能性や、製作技術にみる時期的な相違が見られるのではないかという見通しを得た。 いっぽう、昨年度に実施した閲覧調査の成果をふまえて、論考を複数作成、公表した。筒形銅器と巴形銅器の製作技術系統についての基礎的な分析を論考として作成するとともに、銅鏡について製作技術に関連した論考を公表した。また、各種の研究会や講演において成果の一端について紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古墳時代のはじまり、ないしは前方後円墳成立期における青銅器生産の実態を把握するという研究目的にたいして、当該時期の青銅器生産に系統性の違いや時期的な推移がみられるという見通しをほぼえることができており、当初の目的どおりにほぼ研究が進行しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題に関連して今後におこなうべきは、想定される見通しを補強すべく、さらにデータの蓄積をはかることである。その際に留意すべきは、東アジアという視点を含めた比較研究であり、対象とする時代の日本列島における青銅器生産の系譜をいかに理解するかという点である。そのためには、広くさまざまな青銅器を可能な限り観察するという方向性が求められる。次年度以降、さらに資料の観察をより広く進める必要があるとともに、その成果をある程度の段階で整理し、論考として公表することをめざしたい。
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