考古学者らは仮説の検証や新たな推論を展開するために、遺構や遺物の製造当時の姿をCADデータとしてではなく、リアリティの高い三次元コンピュータグラフィックス(CG)で観察できることを望んでいる。そこで、本研究では特にメキシコテオティワカン遺跡の構造や様々な壁画に焦点をあて、制約が少なく従来よりも手軽に情報を蓄積できる方法を確立することを目的としている。 そのために本年度はこれまでの考古学的調査に基づいたCAD情報をもとにCGによる三次元モデリングを進めるとともに、愛知県立大学多文化共生研究所の杉山三郎特任教授らと協力して、月のピラミッドや周辺の神殿の壁面やケツァルパパロトルの神殿内部にある壁画についての現地調査を行った。さらにその結果に基づいて欠損画像の修復方法を検討し、そのテクスチャ生成作業に着手した。 月のピラミッドや周辺の神殿の撮影計測および壁画資料データの収集を行うことで、修復やテクスチャ作成の対象となる壁面についての様々な条件が明らかになり、大規模テクスチャの境界における整合性や欠損いた壁画の適応的内挿についての検討を始められるようになった。いくつかの方法により、修復された壁画から創建当時のテクスチャ画像を合成する方法を実現し、数種類の遺壁に適用した。現在はその結果を考古学者に評価してもらっている。しかしながら研究の採択が第4四半期と遅かったため、学会発表などその研究成果を出すまでには至らなかった。今後はこれまでに得られた研究成果を順次発表していくとともにテクスチャ合成の完成度を高めることに努める予定である。
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