平成23年度は、渤海期の遺跡の発掘報告書や論文に記載された動物遺存体の出土内容の整理を行った。 さらに、本研究の核である動物遺存体の分析作業を、ロシア科学アカデミー極東支部(ウラジオストク市)で実施した。対象としたのは、クラスキノ城趾とチェルニャチノ2遺跡である。このうち、クラスキノ城趾については、これまでに出土した動物遺存体の資料全てを分析し終えた。出土総量がまだ少なく、動物利用の全容を把握するまでには至っていないが、土坑からウマの頭部(頭蓋骨と左右下顎骨、環椎、軸椎)が出土したことが明らかとなった。これまで知られていなかった、ウマを祀る儀礼の存在がうかがわれる。 また、数年前から分析作業を進め、平成22年度に作業を終了したゴルバトカ城趾についてデータ整理を行い、ほぼ完了した。その結果、同城趾では、家畜飼育が生業の中心であったことや、家畜のなかでもイヌ・ブタの飼育が盛んであったこと、ノロジカや各種毛皮獣の狩猟も一定度行われていたことが推測できた。同城趾については近年中に報告が予定されているため、調査担当者と報告内容について話し合いをもった。動物遺存体については、動物種ごとの出土総量のみならず、部位ごとの出土量や推定される死亡年齢、性別、傷や咬み痕、被熱痕などについての定量的データを公表する予定である。これにより、従来に比べて格段に詳細な動物利用の検討が可能となる。加えて、本研究では、家畜の形態復元を行うために各部位の計測を実施してきたが、そのデータ整理がゴルバトカ城趾についてのみ平成23年度中に終了した。
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