本研究は、古代エジプト新王国時代第18王朝中期から第20王朝初期に特徴的な青色彩文土器を対象として、考古学的調査・X線化学分析・製作実験などを行い、製作技術を復元することを目的としている。今年度の研究では、エジプト、アブ・シール南丘陵遺跡から出土した青色彩文土器を中心に調査研究を行った。 今年度は、特に装飾技術に関する調査を実施した。時代による装飾のモチーフの変化をまとめたところ、生産の初期にあたる第18王朝中期の写実的なモチーフから、様式化が進み、生産の後期にあたる第18王朝後期では、装飾が簡略化されていくという変化を確認することができた。また、10倍のルーペ、500倍のデジタル・マイクロスコープを使用し、装飾の順序についても観察を行ったところ、初期では個体ごと、モチーフごとに装飾の順序が異なり、更に塗り直しの事例を確認することができた。一方、後期になると、装飾の順序がどの彩文土器も同じであるという結果が得られた。これらの装飾のモチーフの変化、装飾技法の変化から、時代による装飾の簡略化・規格化への変化を指摘し、そこから第18王朝中期における生産の確立から第18王朝後期の大量生産への変化の過程を明らかにすることができた。 これまでの研究により、青色彩文土器の製作についてはある程度明らかにすることができた。今後は製作後に青色彩文土器がどのような場面で、どのように使用され、廃棄されたのかという点について明らかにしていきたいと考えている。
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