本研究の目的は東アジア出土の環鈴について、これまでにない考古学的・科学的情報を集積し、本格的なデータベースを作成することで、古墳時代青銅器研究の進展をはかるものである。 最終年度となる本年度には、前年度までの調査を受けて、不足分となる東日本の資料の実測をおこなう予定であった。具体的にはできるだけ多く湯口の場所を観察し、また湯バリ痕を観察することが目的であったが、遠隔地における調査を実施することはできなかった。また、中国遼寧省博物館における調査についても同様であり、今後研究計画の変更をおこなう。鋳物師による環鈴の復元製作実験についても研究再開の後に実施したいと考えている。 本年度の成果の第一点としては、現在まで収集した三環鈴の実測図やデータ等を整理し、すべてデジタル化したことが挙げられる。これにより収集したデータをひとつのソフトによって見ることができるようになった。公開に際しては、所蔵者の意向を優先させ、控える必要がある。 また、前年度までの実見調査の結果から、特に関東地方から出土する環鈴については、環鈴のみの検討ではなく、他の鈴のついた資料―具体的には鈴杏葉や鈴釧などとの比較が不可欠なこともわかってきた。 九州におけるこれら鈴付き資料の分布は少ないため、比較の必要はないが、関東については実施しなければならない。よって今年度は関係論文や書籍・報告書の収集をおこない、実測図等の観察により製作工程の比較研究をおこなった。研究再開後には、この成果をもとに環鈴以外の鈴付き資料について、実見したいと考えている。
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