本研究の目的は、東アジア出土の環鈴について、これまでにない考古学的・科学的情報を集積し、本格的なデータベースを作成することで青銅器研究の進展をはかるものである。 最終年度である本年度はこれまでの調査についてまとめ、環鈴の分布状況と出土古墳について考察した。そのようななか、韓国において新しく環鈴を確認したが、資料調査に赴くことができなかったので、今後の課題としたい。なお、環鈴出土古墳やその製作方法の検討などから、環鈴の用途はやはり馬具である可能性が高いと結論づけた。 製作方法については、日本列島に流通しているものの多くは土型を用いて製作しており、朝鮮半島のそれについては、蝋型を用いて製作したとみられる。なお、従来日本列島に分布しているものの一部が韓国産のものと考えられてきたが、一部については土型を用いた製作の痕跡が認められることから一概に韓国産と断ずることはできないことがわかった。いっぽうで土型によって製作した日本列島産の資料が韓国で出土していることから、当時の対外交渉の状況を読み取ることができる。日本列島産の環鈴自体はその製作技法から、鈴杏葉や他の鈴付き馬具との強い関連性をもつことが予測された。今回は鈴付き馬具については検討対象外としたため、今後考察する必要がある。これらについては考察と合わせてデータベースを作成し、東アジアにおける環鈴の状況をまとめた。 なお、予定していた製作実験と博物館における展示については諸般の事情により本年度は見送ったが、今後実現したいと考えている。
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