本研究の目的は、書籍物流システムを事例として、その流通システムの持つ空間構造の特質と効率化について考察することである。本研究では、特に流通チャネル(取引経路)内におけるパワー関係とそれをとりまく諸要素に着目した。書籍流通業界においては、卸売業者を中心とした中間流通業者が主導して物流システムの改編を行っている。書籍物流システムでは、消費者からの注文に対する即応性という面において極めて問題が多い。これは、現在の出版物流通で採用されている共同配送システムが、雑誌などの大量輸送の効率化を念頭に構築されたものだからである。従って、書籍物流システムの効率化は、中間流通部門の構造変革に留まらず、末端の配送方式の改変にまで踏み込んで初めて達成されるものと考えられる。
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