(1)平成22年度より行っている、中近世移行期港町の景観復原研究の方法論の検討を継続して行った。具体的には、駿河清水・江尻を事例として、報告者が城下町の景観研究にて培った通常の復原方法を土台とし、これに①大縮尺の地図上での地形復原と、②地割形態の分析の深化を追加して、当該期港町の景観復原に適当な方法を検討した。この成果を現在総括しており、今後、史学・地理学学術雑誌に論文として投稿する予定である。 (2)全国の当該期港町のうち、景観研究が既に存在する港町の一覧表(データベース)の作成に着手した。各港町について、①景観に関する先行研究、②景観復原の根拠とされた史資料(同時代史料、発掘調査等の考古学データ、近世地誌、近世絵図、伝承、地籍図、都市計画図、地質・地層データ)、③中近世の政治・社会・宗教・文化的文脈、流通・経済圏、交通ネットワーク、政治権力の支配領域といった地域構造に関する情報を、可能な限り網羅的に収集している。昨年度以降の調査により、現段階で①~③のデータのそろう調査研究に適した港町は、西日本(東海・北陸以西)に集中することが分かった。平成24年度には、近世城下町の形成と共に、中世港町(川湊も含む)の近世化が急速に進展した、東海地方を主に対象として、熱田と岐阜(井口)の港町景観の近世化を復原し考察した。その成果は、国際歴史地理学会で英語発表を行い、国内では市民向けの講演会で招待講演を行う中で、公表した。また、昨年度に引き続き、阿波と周防・長門において、城下町を含めた当該期の地域構造の中で、港町がどのような機能を持ち、位置づけられるのかを考察し、それぞれ学会発表と学術論文として公表した。
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