研究課題/領域番号 |
22720315
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
本岡 七海(稲田七海) 大阪市立大学, 都市研究プラザ, プラザ特別研究員 (70514834)
|
キーワード | 居住福祉 / コミュニティワーク / 貧困問題 / 条件不利地域 / セーフティネット |
研究概要 |
本研究では、「住宅」と「福祉」を融合した新たな居住福祉の在り方と、両者を包含する「地域」の問題解決能力から、地域居住福祉の可能性について検討することを目的としている。本研究の2年目である平成23年度は、昨年度に実施した各対象地域における予備調査によって把握した「大都市型」「地方都市型」「中山間地域型」「遠隔地型」の4類型におけるコミュニティワークの実践に関する調査を進めた。本年度は「地方都市」である和歌山県新宮市と、「大都市型」である東京都新宿区や台東区、さいたま市大宮区、大阪市西成区を中心に調査を進めた。 新宮市においては、部落解放同盟の女性部の運動史や日常の活動の記録や公営住宅の建て替え運動の実践記録などから、居住福祉に関連する生活課題と、それらに関連する問題への解決へ向けた実践のプロセスを明らかにした。また、これらの実践プロセスを明らかにする過程で行った解放運動の中心人物や実際の活動を牽引するアクターへの詳細なインタビューから、運動に関与する女性の持つ地域の生活者としての延長上にある「つながり」がコミュニティワークとして公式/非公式に機能し、地域の問題の早期把握や解決に結びついていることが明らかとなった。この実践プロセスと居住福祉の関係性については『「セーフティネットの空間」の形成過程とジェンダー―同和地区におけるコミュニティワーカの実践から―』(お茶の水地理51巻)について詳細な検討を行った。 大都市における調査は、東京都23区内のインナーエリアやさいたま市の中心部で展開されているNPO法人が主体として展開している高齢者向けケア付き住宅や刑余者の地域生活移行支援の取り組みと地域での関与や認知の浸透のプロセスについて聞き取りを中心とした調査を実施した。また、大阪市西成区の調査に関しては、これまでの研究成果を「釜ヶ崎のススメ」(共著:洛北出版)として出版した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の調査対象地域である新宮市熊野川地区は、平成23年9月の台風12号による豪雨によって甚大な被害を受け、調査を継続して実施することが不可能となった。そのため、熊野川地区以外の3つの対象地域の調査内容に生活誌調査やインタビュー調査を加え、調査計画の変更を行った。 変更後の計画は予備調査の段階であるものの、本調査に向けた基礎的データの収集を着実に行っており、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度の調査対象地域として予定していた新宮市熊野川地区は、平成23年9月の台風12号による豪雨によって甚大な被害を受けたため、調査が一時的に中断した。復興の時期にあわせて調査期間を延長したものの、予定通りに復興が進まず、平成23年度中の調査受け入れの目処がたたなくなった。よって、熊野川地区での調査を断念し、調査対象地を新宮市市街地エリアに限定し、調査計画を修正することになった。これにともない、土地利用の変遷や住宅構造分析に関する統計データを使用した数量的な調査から、高齢者の地域への住み続けや子育て世帯へのサポートを実施しているコミュニティワークの実態をより詳細に明らかにする聞き取り調査に重点をおいた調査体制に変更した。また、24年度以降に予定していた鹿児島県上甑島での予備調査を23年度中に前倒しして実施するとともに予備調査の回数を増やすことで本調査へ向けた基礎的データの収集を集中的に行った。本研究の地域カテゴリーは、「中山間地域」である新宮市熊野川地区における調査が不可能となったことで、「大都市」、「地方都市」、「遠隔地」の3つの分類で分析を行うことになったが、3地域の調査内容にコミュニティワークに関連する人々の生活誌やインタビューデータなどを積極的に取り込み、それぞれの内容を深化させることで、調査計画の変更に対応した。
|