研究概要 |
本年度は,農産物のインターネット通信販売の成功要因に関する分析を行った。分析の対象は法人形態で農業を営む農業法人である。全国の農業法人に対して実施したアンケート調査の分析の結果,以下のことが明らかとなった。 ネット通販を導入する農業法人は,2000年以降,増加し続けている。多くの農業法人にとってのネット通販は追加的な受注手段であり,補助的な販売形態と位置づけられる。農業法人におけるインターネット通信販売の導入は,顧客の増加や年齢層の拡大,顧客の地理的範囲の拡大などにはつながりやすいが,売上や利益の増加に結びつきにくい。しかしながら,売上や利益を上げている農業法人も存在している。どのような条件を持つ農業法人がインターインターネット通信販売で成功するのかを分析するために,ロジスティック回帰分析を実施した。具体的には,インターネット通信販売導入後に売上か利益か利益率が増加した法人をインターネット通信販売で成功した法人として,成功要因の分析を行った。その結果,売上高の規模や通販経験の有無,通販・インターネット通信販売の経験年数,取扱品目の違いなどは,インターネット通信販売の成功に対して有意な関連がみられなかったが,1戸からなる農業法人の方が複数戸からなる農業法人よりインターネット通信販売で売上や利益を上げる確率が高いことが明らかとなった。今後もインターネット通信販売を導入する産地が増えることが予想されるが,技術的な問題や収益性の問題が農業法人におけるインターネット通信販売拡大の阻害要因となっていることが明らかとなった。
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