研究概要 |
本年度は,インターネット通信販売を導入している農産物産地での聞き取り調査とその内容の分析を中心に研究を行った。昨年度の研究結果を踏まえて,農家1戸で法人化している小規模な農家を研究対象とした。 聞き取り調査の内容から,農家におけるインターネット通信販売の現状と可能性,限界について検討した結果,次のことが明らかとなった。農家には,インターネット通信販売を導入することによって,新しい顧客層を取り込むことができたり,通信販売による売上が徐々に増えているという効果が生まれているが,その効果は限定的である。すなわち,インターネット通信販売による売上は数パーセント程度であり,補助的な販売形態となっている。 さらに,農家がインターネット通販を導入するにあたっては次のような問題があることが明らかとなった。ひとつは技術的な課題である。高齢化した農家では,ウェブサイトの構築等を業者に委託したり,息子が経営に加わったことを契機にインターネット通信販売を導入していることから,インターネット通信販売を導入するための技術が不足している可能性が指摘できる。もう1つは,労働力不足の問題である。繁忙期には,収穫や出荷等の作業で多忙となるため,消費者に個別対応するインターネット通信販売の業務を行う時間が確保できていない。そのため,インターネット通信販売に注力できていない。3つ目は,ウェブサイトの認知度向上の難しさである。ウェブサイトを開設してもアクセス数が伸びないために,インターネット経由の注文数が増えない。
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