研究課題/領域番号 |
22720317
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研究機関 | 恵泉女学園大学 |
研究代表者 |
荒又 美陽 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (60409810)
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キーワード | カサブランカ / ハッブース地区 / フランス保護領 / アルベール・ラプラド / 20世紀建築 / オーギュスト・カデ / 文化遺産 |
研究概要 |
フランス保護領下で行われたカサブランカの都市計画とその帰結において重要なハッブース地区に焦点を絞り、本年度は、9月にカサブランカで現地調査、2月にパリで資料収集を行った。9月の調査については、モロッコ文化省、カサブランカ都市計画局、担当建築家、NPO団体カザ・メモワールにてインタビューを行うと共に、モロッコで出版されている関連書籍を入手した。結果として、ハッブース地区が行政の単一の省によって管理された非常に特殊な地区であることが明らかになった。フランスでハッブース地区に関連して言及されるのはアルベール・ラプラドという建築家であるが、彼は素案を作ったのみで、実際にはオーギュスト・カデという建築家が重要であることも明らかになった。カデはハッブース地区に生涯携わり、現地民のために作られたその地区に住み、現地の職人たちの仕事を丁寧に記録した。また、現在は歴史的モニュメントにも指定されているモロッコ人のための裁判所をハッブース地区内に残した。このような歴史的上事実が明らかになってくると、フランス保護領時代の遺産が現在モロッコ20世紀建築として重視されている背景には、植民地の歴史の乗り越えなどではなく、フランス人建築家とモロッコ人エリートたちのかかわりがあった可能性もあると考えられる。また、ハッブース地区の整備計画を作ったエル・ハリリという建築家は、近代建築の保護活動を行っているドコモモ・インターナショナルのモロッコ代表である。そこからみれば、植民地時代の遺産の保護という動きは、モロッコだけはなく、あくまでも国際的な運動としてみるべきということになる。ここから、植民地時代の遺産という位置づけについては、多少の修正が必要であることが明らかになったという意味で、本年度の調査は研究の画期となったといえる。2月の調査は、資料の所在を確認するにとどまったため、来年度、内容をあらためたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
首都大学東京の山田先生に示唆をいだだき、9月の調査はJICAの専門調査員工藤さんに手配していただいたため、短期間にもかかわらず、現在この地区に関わっている主要なアクターにインタビューを行うことができた。 一人の研究ではありえない速度での達成であり、当初予測できなかったほど順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はじめに実施されるカサブランカ文化遺産の目のイベントに参加し、参加者の属性や関心について、インタビューを行う。それにより、ハッブース地区の位置づけはよりクリアになると考えられる。また、オーギュスト・カデの残した資料がパリのフランス国立建築協会に保管されているため、歴史的事実についての確認ができることは確認しておきたい。
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