本年度は、昨年度インタビューを行ったカザ・メモワールが主催する「カサブランカ文化遺産の日」に参加し、現地調査を行うとともに、現在までの成果を地中海学会シンポジウムおよびプラハで行われた国際歴史地理学会で報告し、評価を仰いだ。 カサブランカ文化遺産の日は、2012年4月6日金曜日から8日日曜日までの日程で開催された。おもにフランス統治の初期につくられた建物と、旧市街、ハッブース街のボランティアによるガイドツアー、そして多彩な連続講演会が行われた。6日は主に学校の課外授業を行う日であり、町のあちこちでノートを持った生徒たちのグループとそれを率いるボランティアの姿を見ることができた。7日、8日は一般向けの開放日であり、多くの市民がボランティアの説明に熱心に聞き入っていた。 ボランティアはそれぞれが非常に熱心であり、極めて活発な活動であった。彼らが着用していたTシャツには「私の歴史遺産のためのボランティア」と書かれており、「私たちの」と表現することによる強要が避けられており、かつ彼らの自発性が強調されていることを見て取ることができた。参加者は教養市民層に限定されていたようであり、今後は保護の対象となっている建物の問題を含め、活動の偏りについて考察を深めていく必要がある。 現在までに、保護領時代のカサブランカの都市計画について歴史的な状況を明らかにし、現在の活動に至るまでの道筋も付いた。科研研究の目的は、ほぼ達成できたと考えている。
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