研究課題
本年度は、平城京を研究対象地域に設定し、奈良市教育委員会・奈良市埋蔵文化財センターが発行している過去20年分の発掘調査報告書『奈良市埋蔵文化財調査概要報告書』に掲載された遺構図ののGISデータベースを構築した。具板的には、(1)発掘調査報告書の収集、(2)遺構図のスキャニング、(3)遺構図のジオリファレンス、(4)遺構図のデジタイジング、(6)属性情報の抽出と入力の作業を行った。なお、(4)遺構図のデジタイジングの作業においては、調査区のほか、建物、井戸、塀、溝の遺構について形状の抽出作業(トレース)を行った。また、(6)属性情報の抽出においては、(5)でデジタイジングしたそれぞれの遺構の構造、規模に関する定性的・定量的な属性情報を入力した。その結果、本研究では、平城京の京域を対象とした遺構情報の保存・表示・検索を可能にするシステムを構築することができた。このデータベースによって、遺構情報の迅速な検索やマルチスケールで遺構情報の表示が可能となり、さらに広域での遺構の分布状況や遺構の隣接関係を視覚的に把握することもできるようになった。また、各遺構データの重ね合わせも可能となり、遺構間の関係性を視覚的に把握できるようになった。各遺構に対して属性情報を付与したことによって、これまで表現することのできなかった都市構造に関する主題図を多く作成することができた。例えば、建物の規模を示す属性情報として、建物遺構の面積、柱穴の直径、柱間の距離をGISソフトで計測することによって、建物規模の分布状況を視覚的に表現する主題図を作成できた。この他、平城京内に施工された条坊制の街区(坪)単位で、各遺構の個数や存在の有無を集計することによって、街区単位の土地利用図を作成することもできた。遺構図のGISデータベースの構築は、古代都市史研究の効率化に寄与し、古代都市の都市構造の把握などにおいて新しい展開を可能とするものであることが一定実証することができた。
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2nd International Conference of Digital Archives and Digital Humanities ; Symposium Ronbunsyu, Research Center for Digital Humanities ; National Taiwan University (Taipei, Taiwan)
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