研究概要 |
本研究は焼畑稲作がメインの生計活動であるラオス山村でのウシ飼養の実態を明らかにしようとしたものである。昨年度の調査からウシ飼養が焼畑の休閑地を利用してなされていること,ラオス政府による放牧地限定政策が大きな影響を与えていることが明らかになった.そこで,本年度は調査対象村落をルアンプラバン県シェンヌン郡内の隣接する二村に限定し,8-9月と2-3月のそれぞれ2週間程度のフィールドワークにより,こうした点を詳細に検討した.その結果,以下のことが明らかになった. 調査対象村落のうち,領域面積の広いA村では村内に2つの共同放牧地を設定している.これに対し.領域面積の狭いB村では恒久的な放牧地を設定せず,放棄後一年の焼畑の休閑地および周辺の森林を毎年柵で囲うという方法を取っている.つまり,焼畑循環にあわせ,放牧地を毎年させるシステムを取っている.B村がこうした方法を取るのは,村落面積が狭いためであり,一各村の事情により,放牧地設定の仕方も大きく異なる. 恒久的な放牧地を設定しているA村でもウシ所有者を中心に放牧地内で焼畑を実施している.これは陸稲栽培のためだけでなく,放牧のための草地造成のためでもある.このように,焼畑がウシ放牧にプラスに働くと考えられている一方で,ウシ放牧をすることも焼畑に好影響を与えると考えられている. その一つが焼畑での有害雑草チガヤの減少である,チガヤは除草のしにくい雑草であるか,その若葉はウシの最も好む飼料の一つである.A村にはチガヤ草原が多い.人びとはそれを毎年焼いてそのに生える若葉をウシの飼料とする.ところが野焼きと放牧を3年程度続けるとチガヤは減少してしまう.それを見て,人びとはその場所で焼畑を行なう.収穫後そこを放棄すればまたチガヤがまた生えてくるので,ウシ放牧を再開する.このような焼畑-チガヤ-放牧の循環システムが実践されていることも確認できた.
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