本研究は焼畑稲作がメインの生計活動であるラオス山村でのウシ飼養の実態を明らかにしようとしたものである。 最終年度である本年度は12月中旬に8日間、2月末に11日間ラオスに渡航し、追加調査として、ルアンプラバン県シェンヌン郡フアイペーン村とウィエンカム郡サムトン村の家畜飼養の比較を行なった。フアイペーン村はラオス北部最大の町であるルアンプラバンから1時間、サムトン村は5時間でつく。 その結果、以下の点が明らかになった。1.サムトン村では焼畑の周囲を柵で囲み、それ以外の全ての土地を放牧地とする自由放牧の形態がとられている。ラオスでは、村内に一カ所の恒久的な放牧地を設け、その中でウシを放牧する限定放牧が奨励されているが、奥地ではいまだ自由放牧が続けられているということかもしれない。ただし、この場合は柵づくりにかなりの時間と労力がかかる。2.フアイペーン村では限定放牧がなされており、村内に2カ所の共同放牧地がある。しかし、共同放牧地はいつもその全ての範囲で放牧がなされているとは限らない。村人は柵で放牧地を半分に分け、一方は放牧をするが、一方はウシに侵入を許さず、草を成長させるなど、資源を枯渇させないようにする対策をとっている。3.フアイペーン村では最近自家用車が増えたが、購入費用の捻出にはウシの販売が重要な役割を果たしている。 こうした調査結果をこれまでの調査結果とあわせ、学術論文としてまとめていく作業を現在行っているところである。 なお、9月にはアメリカ、ワシントンD.C.に11日間渡航し、国立公文書記録管理局(NARA)で対象地域の1950年代の空中写真を入手した。これと他の年代の空中写真や衛星写真をあわせて分析すれば、対象地域の半世紀間の土地利用変化を明らかにできる。これにより、ウシ放牧にまつわる土地利用の変化をも把握することができるかもしれない。
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