本研究では、民政移管から10年目を迎えたナイジェリアにおいて、諸民族の伝統的権威者(王や首長)が国家行政のなかで持つ役割や影響力について調査研究を行った。特に三大民族の一つであるイボ人を事例とし、小規模地域集団を単位として選ばれる王(エゼ)が、地方集団を越えて行使する影響力を考察した。調査では、州政府や地方政府が、各集団の王制に対して与える影響力を把握するとともに、各政府が組織する伝統的権威者の助言会議の実態について把握することを目指した。それによって、今日のナイジェリアにおいて伝統的権威者が果たす媒介者としての役割を明らかにし、アフリカにおいて王位や首長位が持つ現代的な意味を考察した。
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