最終年度にあたる平成25年度は、ザンビアにおける食糧援助に関する情報収集を継続するとともに、エチオピア北部において3ヵ月の現地調査を実施した。この調査結果をもとに、エチオピアとザンビアにおける食糧援助の比較を行ったところ、次の点が明らかになった。 1.援助提供国と援助方式の相違:ザンビアでは、旧宗主国であるイギリスからの援助が多く、さらに援助食料の現地調達が主流なのに対し、エチオピアではアメリカからの食糧援助が圧倒的に多く、援助食料の現地調達はほとんどなされず、ほぼ穀物生産国の供与でまかなわれている。 2.ドナー諸国の自律性:ザンビアでは、アメリカなどの一部のドナーが、国際NGOとの協力関係のもとで政府の食糧援助プログラムとは異なる独自のプログラムを展開し、自律性を確保しているのに対し、エチオピアでは、国家とドナーとが一体となった食糧援助プログラムが展開されており、ドナーやNGOが単独の食糧援助を実施するのは困難な状況にある。 3.援助食糧の分配論理:ザンビアでも、エチオピアでも、国家による援助対象地域の選定や援助量の決定が「ターゲット」を絞り込んだかたちでなされているのに対し、ローカルなコミュニティレベルでは、援助食料が公式な対象者以外にも、なるべく平等に行きわたるような分配のかたちがとられていた。 以上の比較研究をとおして、サハラ以南アフリカ諸国において、食糧援助を実施するドナーや政府の協力関係や援助体制には違いが大きい一方、ともにナショナル・レベルとローカル・レベルとのあいだに分配の論理の乖離がみられ、食糧援助をとおして国家とローカル社会との境界が顕在化していることが明らかになった。
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