研究概要 |
本研究課題では、中華人民共和国における「住民自治」についてムスリム・マイノリティの事例を中心として調査・研究した。研究代表者はこれまで中国のムスリム・コミュニティの組織原理や組織運営について個別具体的な研究を進めてきたが、そこへ「住民自治」という新たな研究視点を導入し、現代中国における党国家とムスリムの関係性を理論的に考察することにした。 2011年度は、2010年度にひきつづき、日本国内および中国の主要な教育・研究機関において改革開放期の中国における「住民目治」の政策(例えば、「社区建設」や「村民委員会選挙」などに関する先行研究)民族・宗教政策に関する基礎的な文献資料を収集した。 こうした文献調査と並行して、2011度は中華人民共和国の青海省および内モンゴル自治区においてムスリム・コミュニティに関する現地調査を実施した。青海省西寧市では、東関という地区にある清真寺やムスリムNGOを訪問し、ムスリム・エリートを中心とした自発的な相互扶助活動を調査し、またてイスラームの犠牲祭を参与観察し、青海省の民族・宗教政策にみられる地域的特徴を把握した。一方、内モンゴル自治区では、フフホト市回民区にある清真寺やイヌラーム教協会を訪問しかつ、イスラームの断食明けの祭りを参与観察し、ムスリム・コミュニティの運営状況および国家主導の民族,宗教政策の実施状況を把握した。両地域ともにムスリム諸民族は当該自治区の「主体民族」ではないことから比較的緩やかに支配されており、コミュニティ・レベルではある程度の自律性が保障されている。これは新彊ウイグル自治区やチベット自治区の「主体民族」とは対照的な現象であり、注目に値する。 今後の課題としては、漢族や非ムスリム・マイノリティのコミュニティ運営の具体的状況に対しても注意を払いながら、中国共産党の国民統合とコミュニティの関係性を明らかにする必要がある。(785字)
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