本プロジェクトの目的は、中華人民共和国にくらす少数民族の「住民自治」の現在的状況をムスリム・コミュニティにおける人類学的なフィールドワークにもとづいて個別実証的に検討することにある。研究代表者は、中国の清真寺(モスク)においてこれまで実施したフィールドワークの調査・研究成果(2007年度~2009年度科研費)をふまえ、本研究においては「住民自治」の視点を新たに導入し、中国の少数民族地域(内モンゴル自治区、青海省、新疆ウイグル自治区)におけるムスリム・コミュニティの共同性と自律性をめぐる諸問題を理論的に検討した。改革開放期、「イスラーム復興」が党国家主導のもとで生起・進展するなか、ムスリム・マイノリティは自分たちのモスクおよびローカル・コミュニティを維持・再組織するために党国家とポリティクス(政治的かけひき)を展開しており、一方、党国家の方もムスリム・マイノリティを国民統合に巧妙に取り込もうとしている。
|