本研究は、「ひきこもり」当事者(本人及び家族)・支援機関(公的及び民間)・医療機関へのインタビューを首都圏・名古屋周辺地域で行い、「ひきこもり」の医療とのかかわり、医師や支援者の(医療的)処置をめぐるジレンマ・混乱を明らかにしつつ、医療化の包括的検証を行うことを目的とした3年間のプロジェクトである。調査1年目の本年度は、まず両地域で「ひきこもり」関連の会・活動に参加し支援の動向を捉え、主に支援者・当事者にアプローチをした。また、共同研究を行っている名古屋の精神科医や支援者からの紹介で医師へのアプローチを進めた。夏からは、支援者・医師・当事者への聴き取り調査を両地域で-とくに名古屋周辺地域の医師・支援者に重点を置きながら-実施した。これまでの調査を通じ、1「ひきこもり」が診断名でなく多様な状態を表す概念であることから「ひきこもり」事例の診断は多岐にわたり、その診断は医師の背景や考え方、ジェンダー観などに大きく左右されうること。2支援が長期間にわたり、医師・支援者は対応に苦慮している場合が多いこと。3「ひきこもり」の中に発達障害とみられるタイプが多くみられ、発達障害の見立てが支援のありかたと関連していることなどが明らかとなった。こうした調査結果を、R Ronald & A.Alexy(eds)Home and Family in Japan(2011)所収論文"Coping with hikikomori: Socially withdrawn youth and the Japanese family"として、また、アジア研究学会大会(3月)「日本におけるメンタルヘルス」分科会において発表することができた。
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