研究概要 |
1,昨年度はまず,メキシコ・テピート地区に設置された祭壇を通じて拡大するサンタ・ムエルテ信仰について,特に,同祭壇をめぐる儀礼の主催者,参拝者を中心に現地調査を行った。結果として,主催者,信者において、同信仰がカトリックの一部であると位置づけられていたとともに、制度的カトリックの教義とは大きな違いが存在しているという点が確認できた。そのような傾向は、既存の宗教的文脈の中で広く認知されているグアダルーペの聖母像を,民衆的創造力によってパロディー化したサンタ・ムエルテ像の図象学的特徴のみならず,様々な儀礼的側面においても確認できた。このような点は,近年,カルチュラル・スタディーズにおいて注目されつつあるサバルタン階級の文化的特徴と符合するものであるが,そこでの具体的信仰実践においては,制度的宗教からの脱却をめざそうとする信仰解釈が顕著となっていた。「神よりも死の聖人のほうがより重要である」といった信者のコメントからはそのような傾向が看取できた。(『日本宗教学会』において口頭発表) 2.その後、同民衆的動向が、テピート地区という歴史的・社会的に「負」の記号をふされたバリオと強く連動しているという仮説を証明するため,参拝者のテピートについての解釈を調査中である。
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