研究課題
東アフリカ・スワヒリ海村社会の海資源の利用と管理に着目して、民族間での資源の使い分け/棲み分けを明らかにすることをつうじて、多民族共存のメカニズムを解明することが本研究の目的である。本年度は、タンザニア・スワヒリ海村のタンガ、パンガーニ、キルワ島の三海村において沿岸環境管理と住民生活ついて現地調査をおこなった。また別経費ではあるが、スーダンの海洋研究の主要機関である紅海大学の協力を得て、紅海沿岸の海村(ドンゴナーブ、サワーキン)にて二回の現地調査。さらに、本研究の海外協力者であるPascal博士の所属するエチオピア・アジスアベバ大学での研究打ち合わせ、および内陸湖(チャモ湖、アバヤ湖、アワサ湖)での淡水漁撈の調査を実施した。これより、スワヒリ海岸と紅海を含むインド洋西海域における沿岸環境保護と住民生活、さらに海洋沿岸漁撈民と淡水漁撈民との比較研究を行うことができた。タンザニアのキルワ沿岸でWWCにより進行中のBeach Management Unit(BMU)を軸にした沿岸環境管理計画について、キルワ・マソコWWC事務所で、その現状と困難について聞き取り調査をおこなった。BMUによる沿岸管理を受け入れる海村(多くはBMUとともにもたらされる援助金目当てであると反対海村の住民から揶揄される)もあれば、BMUに強く反対する海村もある。キルワ島もBMUに反対の海村であるが、住民に聞き取りしてみると、BMUについて正確に理解している人はほとんどいないことがわかった。プロジェクト側と現地住民とのコミュニケーション不足と、援助金をちらつかせてのプロジェクト側のやや強引な姿勢という問題点が明確化した。文化人類学者はこのようなプロジェクト側と現地住民の両サイドの問題点を同時に知ることができるゆえに、両者をつなぐパイプとしての役割・義務を担わなければいけない。
2: おおむね順調に進展している
本研究の研究計画にもとづき、毎年度スワヒリ海村における現地調査を実施することができている。タンザニアのペンバ島、タンガ、パンガーニ、マフィア島、キルワ島においてスワヒリ海村社会の比較研究調査を進めている。研究成果も随時、学術論文と学会発表により公表することができている。また、現地住民・海外協力者・研究機関との関係も良好であり、今後も本研究への協力を得ることができると期待できる。ただしケニア北部沿岸の情勢不安(ソマリア海賊による外国人誘拐、殺害)により、ラム島とパテ島での現地調査は実現できていない。現地の友人と連絡をとりながら情勢回復を待っている。別経費によって紅海社会(スーダン)において現地調査をおこなったことにより、「インド洋西海域世界」というインド洋交易によって歴史的な民族交流があった文化圏のなかで、スワヒリ海村社会を位置づけることができてきている。両地域の比較研究により、スワヒリ海村の資源利用の特質が明らかになりつつある。
本研究の課題はおおむね順調に進展している。しかし、ケニア北部沿岸の情勢不安(ソマリア海賊による外国人誘拐、殺害)により、ラム島とパテ島での現地調査は実現できていない。現地の友人と連絡をとりながら情勢回復を待っている。本年度にラム島、パテ島での現地調査を計画しているが、情勢回復が見込めない場合は調査地の変更も可能である。その場合、主要調査地のキルワ島においてさらなる調査の進展をはかる。特に、キルワ沿岸域で2004年ごろから開始された環境保護政策(マングローブ環境における漁撈制限)にともなう住民生活の変化に着目することにより、トップダウン的な沿岸域開発が現地の生活に与える影響を、文化的・経済的側面から評価することを目指す。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Afro-Eurasian Inner Dry Land Civilizations
巻: 1 ページ: pp. 81-89
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SHIMA: The International Journal of Research into Island Cultures
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嶋田義仁編『シャーマニズムの諸相』 アジア遊学141, 勉誠出版
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『BIOSTORY』
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http://archives.chikyu.ac.jp/archives/AnnualReport/Viewer.do?prkbn=R&jekbn=J&id=248
http://archives.chikyu.ac.jp/archives/AnnualReport/Viewer.do?prkbn=R&jekbn=E&id=248