本年度は、フィジーの国立古文書館、南太平洋大学にて関係資料(政府刊行物、紛争に関する研究書)の収集を行った。フィジーにおいては、また、ダク村落とマタワル村落における短期間の滞在や、首都圏における両村落民への聞き取りを通じて、人々の紛争時の経験及び紛争観についての情報収集に努めた。フィジーが軍政下にあるため、調査には限度があったものの、フィジーに内在するローカルで伝統的な政体によって、紛争時の対応に差異が見られることが、ある程度明確となってきている。 フィジー以外では、ニュージーランドのオークランド大学にて紛争に関係する資料収集と、同大学における太平洋出身の政治学者の方々と情報交換を行った。オーストラリア、ニュージーランドなどオセアニアにおける大国の存在や、近年盛んになりつつあるNGOの活動、また先住民ほど政策とも関係しているアファーマティヴ・アクションなどがオセアニア諸国家の政治に与える影響について理論的な議論を重ねることができた。 成果公開については、アジア経済研究所、国立民族学博物館における研究会、国際シンポジウムで研究発表を行った。前者がグローバル化という切り口からオセアニアの紛争をとらえる上で有意義な知見を得ることができたのに対して、後者では紛争の中でも平和構築という切り口からアフリカの紛争と比較をすることができたという意味で有意義であった。著作・論文は、『オセアニア』(朝倉世界地理講座15)の著作に掲載したほか、『People and Culture in Oceania』、『国立民族学博物館研究報告』の査読誌に投稿し、それぞれ掲載された。
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