研究課題/領域番号 |
22720338
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
丹羽 典生 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 助教 (60510146)
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キーワード | 紛争 / オセアニア / フィジー / 比較政治学 / クーデタ / 先住民 / 移民 |
研究概要 |
本年度は、フィジーの国立古文書館、南太平洋大学にて関係資料(政府刊行物、紛争に関する研究書)の収集を行った。フィジーにおいては、首都圏近郊の諸村落におけるフィジー人、インド人、そのほかメラネシア系移民を対象とする聞き取りを通じて、人々の紛争時の経験及び紛争観についての情報収集に努めた。二大民族であるフィジー人、インド人以外の民族に関する資料を収集することで、紛争の対立のありようをより緻密に分析することが可能となった。 フィジー以外では、ドイツのフロベニウス研究所にて関係する資料収集と、同大学におけるオセアニア研究者と情報交換を行った。オセアニアの政治問題に関してはオーストラリア、ニュージーランドが研究上の中心地であるが、であるがゆえにオセアニア地域の大国としての政治的利害関係と密接に結び付きすぎているという問題があった。そうした国々とは異なる関係をオセアニアともっている、また日本と同じくオセアニアにおける旧植民地の宗主国であるドイツの研究者との情報交換を通じて、独立以降に展開している宗教的社会運動がオセアニア諸国家の現代政治に与える影響について有意義な議論を重ねることができた。 成果公開については、筑波大学、国立民族学博物館における研究会、シンポジウム等で研究発表を行った。以上を通じて紛争という国家間の問題とされがちな話題を、開発や福祉といった文脈や少数民族問題という視角から分析することができた。著作・論文は、『アジア経済研究所調査研究報告書』に掲載したほか、オセアニアにおける公共圏に関する論集に投稿済みである(来年度出版予定)。それ以外には、紛争に関する編著を来年度の出版に向けて準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度公開された業績以外に来年度の成果公開に向けて、一般読者も念頭に置いたオセアニアの紛争関係の編著の原稿をまとめることができたげまた国際シンポ2件と国内シンポ1件の準備を進めることができた。一方で出版を計画していたいくつかの原稿がおくれているが、数年のあいだにはあるていどのかたちになると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にもとづいて引き続き研究を進める。研究課題に関係するシンポジウムの企画、参加が予想以上に増える予定であり、想定していたほど現地調査に時間を割けない可能性もある。その場合は計画していた調査項目のうち成果公開の関係で早めに必要となる、あるいはいまでしかあつめられない情報を優先的に収集し、それ以外の項目は後に別の機会に調査することにする。また、来年度は本研究課題の最終年度にあたるので、最終的な成果のとりまとめを念頭に置きつつ、同時にその後の研究の展開・発展を考慮して研究を推進していきたい。
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