本研究の初年度である本年度は、文献研究(理論的研究)を中心に、フィールドワーク(経験的研究)を行った。前者においては、近時の教育改革の全体像とともに、学校と保護者・地域住民を変容させる可能性のある地域住民・保護者参画型学校の導入背景やその目的について探求した。その結果、消費関係として把握されうると想定された学校と保護者(ならびに地域住民)との関係が、参画型学校の設置により、新たな「教育コミュニティ」として再編されつつあることを見出した。しかし、教育コミュニティを2000年以降の教育改革のコンテキストに照らせば、それは、国家責任の後退のなかでの保護者・住民への責任と負担の増大をもたらすものとして理解しえた。 後者であるフィールドワークにおいては、学校運営協議会調査と教育ADR機関調査を実施した。学校運営協議会は、岩手県宮古市の小学校並びに設置者である市教育委員会を、教育ADR機関は、京都市教育委員会設置機関を調査した。前後者ともに、設立の経緯と現状について聞取調査を行った。学校運営協議会については、設置や形態がこれまでの学校と地域との関係性によって大きく左右されること、すなわち法制度が予定する地域住民・保護者と学校との協働運営ではなく、学校が「主体」として運営が進められていることが判明した。教育ADR機関については、単に紛争処理を目的とするのではなく、生徒指導と保護者への指導を一括して行っていることが明らかになり、教育ADR独自の特徴として注目に値すると考えられる。以上の協議会・機関については、今後とも継続的に調査を行い、分析を行う予定である。
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