研究課題/領域番号 |
22730003
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
土屋 明広 岩手大学, 教育学部, 准教授 (50363304)
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キーワード | 法社会学 / 学校教育紛争 / 紛争処理 / 教育ADR / 教育改革 |
研究概要 |
本年度は昨年度同様にヒアリング調査並びに文献研究を行った。 ヒアリング調査は、当初予定していた保護者参加型学校への実施が東日本大震災発生のため困難になったため、教育ADR機関に対してのみ実施した。調査を実施した機関は、京都市「学校問題解決支援チーム」、並びに東京都教育委員会・教育相談センター「学校問題解決サポートセンター」である(福岡市教育委員会「学校保護者相談室」調査も予定していたが、担当者急用のため実施できなかった)。前者は昨年度も実施しており経年的な変化の有無について確認した。その結果、相談件数は少数に留まっていること、しかし解決に至るまでが長期化していることが明らかになった。後者については、設立の経緯や利用状況、相談以外の業務内容など多岐にわたるヒアリングを行った。その結果、当該センターでは、単に相談業務に取組むだけではなく、全都的に学校の組織対応能力向上を目的とした活動を展開していることが判明した。これらの調査結果によって教育ADR機関が扱う案件(対応する保護者)や役割の変化を推測することができた。 文献研究では、紛争処理における「正義」や「公平性」の在り様、地域社会と学校との制度的・実態的変化、学校内におけるADRとも言い得るスクールカウンセラーに関わる文献を中心に収集した。「正義」「公平性」に関しては、近年紛争処理のコンテキスト適合性が主張されるところであるが、教育ADRにおいては学校教育のもつ「人間形成」という理念との整合性の探求が課題であることが分かった。また、学校と地域との関係論においては互恵的関係が重視されるなか、国家制度としての教育制度がどのように、両者の関係性ならびに紛争を規定するか明らかにする必要があるとの結論に至った。さらにスクールカウンセラーについては、教師と保護者との間の結節点的な役割を果たしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は既設の教育ADR機関並びに都市部と地方部の保護者参加型学校への調査を通して、学校教育紛争の質的、量的変化を明らかにし、理論的考察を加えた上で教育ADR機関モデルの構築を目指すものであるが、2011年3月に発生した東日本大震災により予定していた後者に関する調査活動が困難になった。そのため、(3)と自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
保護者参加型学校調査は、申請者の勤務地である岩手県所在の学校を予定していたため、今年度と同様に来年度も、実施が困難であると予想される。そのため、本研究は既設教育ADR機関への調査を経験的研究の主軸に据え、引き続き実施して行くことにする。保護者参加型学校については、様々な文献研究から全国的な傾向の解明を試みる。 以上のことから、「学校・教師と保護者」の関係性の変容を明らかにし、教育ADR構築に関する理論的研究をまとめていく。
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