本研究は教育制度改革期における学校教育紛争の変容についての考察を踏まえた処理システム構築の手がかりを得ることを企図したものであった。採択年度間で明らかになった点は以下の二点である。第一に、現在学校に導入されつつある保護者・地域住民参加型運営システムは、学校と保護者等を垂直的な関係(学校運営において学校が主、保護者等が従)から水平的な関係(協働的な学校運営)へと変容させ得る可能性を持つ一方で、教育法制の改正によって国家主導型で学校主体的な学校運営が強化されていることで、その可能性が減じられていること。 第二に、全国的に整備されはじめている保護者対応システムによって、第一点目と相乗的な結果として学校と保護者等との関係が新たな垂直的関係へと再編成される可能性が出来していること、である。具体的には現在、全国の教育委員会において「モンスター・ペアレンツ」などへの対応の必要性からチーム設置や対応マニュアル策定など進められているが、これらの基本的スタンスは、教育現場におけるカウンセリング・マインドの重要性とそのスキル論をメインとした構成となっていることから、学校と保護者等はカウンセリング関係として再構成されつつあると予測し得ることになる。すなわち、学校と保護者等との関係が新たな垂直的関係(教育実施主体・カウンセリング実施主体と実施支援者・カウンセリング客体)として再編成されはじめていると考えられるのである。 以上のような制度改革とカウンセリング・マインドの流通という実態が明らかになったことから、学校、保護者、地域住民、そして学習者である子どもたちにとって、よりよき「教育」活動に資する学校教育紛争処理の構築作業が今後の課題となる。
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