研究課題/領域番号 |
22730004
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
朱 曄 静岡大学, 法務研究科, 准教授 (30435945)
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キーワード | 物権法 / 厳格な物権法定主義 / 法的効果 / 不法行為法 / 法定債権 / 共通点 |
研究概要 |
本研究は、最新の日本法制度の議論と照らし合わせながら、現在の中国法規定の具体的な適用の状況を踏まえ、物の権利移転に関する紛争解決について、浮上してきた諸問題の全貌を解明したうえで、問題解決の方法を提案することを目的とする。 研究の次年度の本年度は、問題解決に相関する基礎作業、たとえば、資料収集や現地でのヒアリング調査などを行った。 また、中国の物権法制度の複眼的な考察に資する研究を行い、次のような結論に至った。すなわち、厳格な物権法定主義を採用した物権法と、法定債権の一つとされている侵権責任法(不法行為法)とでは、上からの視点の意味合いを持つ「法定」という共通項があり、そして、中国の立法者において両者の法的効果を厳密に区別して規定する意識が欠如していることが法的効果を巡る規定の類似性を生み出した原因である。そして、民事法の基本規定である物権法や侵権責任法(不法行為法)の制定は、立法者からして社会の安定を図る安全弁を設けるという意味も潜在的にあり、他方、二つの単行法は庶民にとって自己の権益を守るための道具としても利用される。こうした分析は物権法の適用傾向を理解するにあたって有益と思われる。 以上の研究内容について、現代中国法研究会において報告を行い、その成果として論文を完成した。2012年度では今までの基礎分析を土台に物権法運用の実態研究を展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物権法、不法行為法を巡る横断的な研究は、立体的に物権法の適用を解析することに大変資すると思われる。二つの法律について両方の文献収集、解析などの基礎作業は相当の労力が必要であり、2011年度は関連する重要な基礎作業を行った。
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今後の研究の推進方策 |
中国物権法における不動産の善意取得制度の条文整理と解釈を行い、この研究成果を土台に不動産取引紛争の実態分析を展開したい。
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