本研究は、最新の日本法制度の議論と照らし合わせながら、現在の中国法規定の具体的な適用の状況を踏まえ、物の権利移転に関する紛争解決について、浮上してきた諸問題の全貌を解明したうえで、問題解決の方法を提案することを目的とする。 研究の最終年度の本年度では、研究課題の最終的な作業、すなわち、事案に基づいた詳細な分析、制度運用の問題点の抽出や問題解決の方向性の明示などを行った。 具体的に言えば、中国では、市場経済制度の導入と共に物権法が制定され、善意取得制度について単独な規定が設けられている。その106条は、動産および不動産とあわせて規定しているため、その理解が決して容易ではない。そこで、本研究は、まず、中国の不動産物権変動理論とその生成原因などを踏襲しつつ、複眼的な視点から解析を行い、この条文の重要性の再認識および若干解釈上の理解を纏めた。 次に、以上の作業を踏まえながら、条文適用の実態を解析し、紛争処理時の特徴と課題を検討したうえで、問題解決の方法の提示を試みた。 総じて言えば、本研究の目的は、中国における不動産の権利移転に関する紛争が、新しい物権法のもとで如何に解決されているかについて、その現状および問題の解決策を比較法の視点から、明らかにすることにある。研究の最終年度では、社会主義国家である中国における最初の物権法の運用状況について、歴史的経緯を踏まえながら、比較法の視点から緻密な実態検証が行われたため、研究の目標が達成されたと言えよう。
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