裁判による商取引紛争の迅速、確実、効率的な処理は、各国の裁判所にとって永遠の課題である。裁判官は、紛争事案の的確な把握のため、商事法の専門知識だけでなく、商取引の実情にも精通する必要がある。また、裁判官は、手続きを迅速に、確実にかつ効率的に進める必要がある。19世紀のイングランドでは、裁判制度は、取引の実態の変化に十分に対応していなかった。1875年裁判所法は、裁判制度を大きく変えたが、商取引の迅速、確実、効率的な紛争処理を実現するには至らなかった。本研究は、19世紀末のMathew高等法院判事のイニシアティブに注目し、商事法廷の設立までの過程とその裁判が商事法に与えた影響の検討を、試みた。
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