研究課題/領域番号 |
22730013
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仲野 武志 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50292818)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 行政実体法 / 行政法各論 |
研究概要 |
平成24年度は、研究実施計画どおり、物権を形成する国家作用の分析をほぼ終えることができた。具体的には、民法に定める所有権、地上権、永小作権、地役権、留置権、先取特権、質権、抵当権及び入会権を発生させ、変更し、又は消滅させる措置法律、非訟事件の裁判及び行政処分につき、明治初期に遡って、立法例を悉皆的に取り上げ、系統的に排列した上、それらがいかなる理論的根拠に基づいて正当化されるかを考察した。その際、物権の客体である物たる資格についても、併せて検討する必要が生じたため、民法上の物でないものを民法上の物とし、又は民法上の物を民法上の物でないものとする国家作用についても、同じ方法を用いて分析することとした。これにより、正当化根拠を同じくする国家作用を、当初の分類の枠を超えて再分類し、組み替えた類型が、本研究の目的としていた新たな行政法各論の体系である。これは、近時散見される場当たり的な法の分類でなく、学問的に必然性のある道具概念性を備えた分類である。 平成24年度は、結果的に、当初予想していたよりも多岐にわたる行政行為の類型論が析出されたが、それはわが国の実定法体系の多様さを示すものであると同時に、これらに依拠した行政法理論の今後の発展を指し示す道標ともなるものである。例えば、公用収用法制と公用換地法制との差異についても、従来視野に入っていなかった立法例を踏まえて、政策分野を問わず横断的な考察を実施することができた。わが国の行政法学界では、行政実体法の研究は、たまたま裁判例で取り上げられた個別法を中心とする限定的なものにとどまっていたが、本研究により、そのような空白領域を一気に埋めることに成功したと考えられる。これらの成果は、最終的なとりまとめを終え、今年度中に単行本として出版する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物権・債権を形成する国家作用を分析する際には、併せて物権の客体たる物、物権・債権の主体たる人・法人、債権の発生原因たる契約等についても分析せざるを得ないことが判明したため、昨年度はこれらの派生的な課題にも取り組んだが、当初の研究計画で予定した内容については、計画以上に進捗したため、全体としておおむね順調に進展している状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、債権を形成する国家作用の分析に力を注ぐこととなるが、これについては、すでに検討を終えた物権を形成する国家作用に関する知見を可能な限り活用する予定である。例えば、賃借権については、地上権についての分析をほぼ転用することができると見込まれ、また、抵当権の被担保債権についての分析は、債権一般についても妥当するものと考えられる。このように、平成24年度までの研究成果を利用できるだけ利用することにより、今後の研究をより円滑に推進させてゆく予定である。
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