アメリカ行政法実務における和解を総合的に研究するための前段階として、22年度は手始めにアメリカ証券取引委員会(SEC)の和解実務について個別領域研究を進めた。SECの証券諸法違反者に対する法執行には、裁判所での司法手続を経て判決の形で行うものと、行政手続を経てorderの形式で行うものとがある。しかし、圧倒的に、途中の段階で和解(settlement)で処理されることが多い。この和解を子細にみていくと、和解は、司法手続及び行政手続における正式な手続が開始される前に、調査手続段階でも見られる。これを略式の和解(informal settlement)という。また調査手続終了後、正式の手続開始後での和解を正式の和解(formal settlement)という。これらは、SECの行政実務においては欠かすことの出来ないものであるが、正規の手続をへた判断(判決なりorderなり)とは異なり、圧倒的に有利な位置にSECは立っており、その判断基準も運用もSECの恣意的なものになりうる素地がある。 22年度の研究においては、これらSECの和解における、独自の手続や実体的基準等について明らかにするとともに、その和解に至る動機、和解が内在させる当事者間における問題点、公共の利益に与える影響について示した。一つの論文としてまとめている途中である。 以後は、このSECの和解実務を一つのモデルに据え、他の領域の和解実務との比較をしていきたいと考える。
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