研究課題/領域番号 |
22730020
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
奥谷 健 広島修道大学, 法学部, 准教授 (70335545)
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キーワード | 相続税 / 事業承継税制 / 遺産取得税 / ドイツ相続税法 |
研究概要 |
平成22年度の研究成果をもとに、遺産取得税方式による相続税制の個別的問題について検討した。具体的には、まず近時ドイツで行われた相続税制改正の背景となった連邦憲法裁判所判決を検討し、その改正内容についてまとめ公表した。そして、その主眼の一つに事業承継税制があることから、ドイツの新事業承継税制をまとめ、そこからわが国の相続税における事業承継税制の問題点を指摘するとともに、示唆を得た。また、事業承継税制の観点からも、相続税の課税方式としては遺産取得税方式が望ましいとの結論を得た。なお、これについては平成24年6月に開催される日本税法学会での報告も予定している。 次いで、相続税の納税義務者について検討している。ドイツでは、遺産取得税方式に基づき、一定の条件のもとで、法人にも相続税の納税義務を課している。これに対して、我が国の相続税法は、法人は納税義務者とはなりえない。その根拠は、法定相続分を考慮する税額計算方式を採用しているため、と考えられている。この点については、相続制度の趣旨から考えると一定の合理性があると考えられる。しかしながら、我が国の相続税はその基本は遺産取得税方式であるため、遺産取得税方式としてみた場合には、法定相続分を考慮することに問題があるように思われる。そこで遺産取得税方式という点から、我が国で法人が相続税の納税義務者とすることの問題・妥当性について現在研究を進めている。具体的には、ドイツにおける法人や社団などの人的結合の相続税納税主体性を巡る判例および議論を検討し、それをもとに、わが国の相続税における納税義務者の範囲について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定した通りの研究を進め、それについての成果を得ている。またそれらを論文にすることもおおむね良好に進んでおり、今年度も研究成果の論文1つを公表することができている。なお、これについては平成24年6月に開催される日本税法学会での報告も予定している。
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今後の研究の推進方策 |
概ね現在の研究を進めていくことでよいと考えている。しかし、ドイツでの最新の議論に触れる機会をえるために計画しているドイツでの調査が、次年度以降は支給額が減るために期間を短縮せざるを得ず、その点で支障が出るかもしれない。しかし、これまでの資料や短期間での集中的な調査、あるいは、帰国後もメール等での情報提供を得られる人的な協力体制を構築することで対応していきたいと考えている。
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