研究概要 |
今年度に実施した研究の成果は以下の3点にまとめられる。 第1に,証券市場に関する規制の国際的調整についての検討を行ったことである。箭年度の銀行分野と比較すると,会計基準の策定や証券取引所等の自主規制など民間部門の役割が強く,それゆえ公法理論との抵触部分がより大きくなる特色がある。以上の性格を「国際ネットワーク」という政策手法の中に位置づけ,国際法学や国際政治学の議論と国内公法学との議論を接合させる手がかりとすることを模索中である(公法学会報告)。 第2に,証券市場規制と密接なつながりのある消費者保護について,消費者法の公法学からの基礎的研究に着手した。まずは,集団的消費者利益の実現に関する公法学の議論状況を整理するとともに(消費者法学会報告),国際レベルにおける民事法学との協力可能性を模索する作業を行っている。この作業の中で,民事法・競争法・国際私法の研究者との学際的な連携の機会を得た。 第3に,国際金融市場規制分野の特色を明らかにし,グローバル化における公法理論の総論を構築する手がかりとするため,他分野との比較の作業にも着手した。今年度はとりわけエネルギー法(とくに原子力法)における国際的な条約・協定の枠組(国際原子力機関・原子力損害賠償条約・原子力安全条約等)の検討を行い,この点について海外の研究者と交流する機会を得た(テュッセン・シンポジウムにおけるドイツ語報告)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は保険分野におけるグローバル化の現状を取り扱う。証券分野とともに保険分野でも消費者行政との関連が深いので,消費者行政の国際化の議論も射程に含めつつ検討を行いたい。また,保険分野では社会保障(とりわけ医療保険・年金保険)との接点も広いため,社会保障の議論を踏まえたイノベーションの可能性もあわせて探ることとしたい。. また,最終年度の一般論の構築に向けて,グローバル化をめぐるいくつかのキー概念に注目した分析や,国際金融分野以外の法分野との比較の作業も行うこととしたい。
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