本年度は、(1)内容規制/内容中立的規制二分論を扱う邦語文献を収集、読解し、論点整理する作業、(2)1990年までのアメリカの二分論に関する学術論文を収集、読解し、論点整理する作業、(3)1990年以降の、二分論を制度的側面から根拠付けるアメリカの学説を収集、読解し、論点整理する作業を行った。 (1)については、日本の従来の二分論を性格に把握し、その問題点を明確にする目的で作業を行った。(2)は、特に日本の従来の学説が主として参照することが多かったアメリカの学説を再度検討するためのものである。そして、(3)は、22年度の中心的作業であった。ここで、90年までのアメリカの学説を洗練化し、新たに二分論を統治機関間の権限配分という制度的側面から根拠付ける学説を検討した。ここで検討したF.Schauer、L.Alexander等の学説は、アメリカ連邦最高裁の二分論の根拠をより説得的に論じるものであり、アメリカの法理の正確な理解に資するものである。わが国への二分論の応用に際しても、この流れに属する学説の理解は欠かせないとの認識から、検討を行った。 日本の憲法学説が二分論を熱心に提唱してきたにもかかわらず、最高裁においてそれが表現の自由保護的に運用されることはなかった。本研究課題は、その理由を探り、今後の二分論の裁判法理としての現実化を試みることを主たる目的としている。23年度は、特に(3)の学説に対する批判説を詳細に検討し、その意義と射程をさらに明確化する。そして、わが国における二分論の改善の方向性を述べることとしたい。
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