研究概要 |
本年度は以下の手順で研究を進めた。 (1)内容規制/内容中立的規制二分論の硬質性の緩和を図る議論、すなわちより柔軟な審査を提唱する議論を検討した。この系統に属するのは、S.Williams、M.Dorf、R.Posner、S.Shiffrin等である。特に二分論を緩和することで、「規制の効果の審査」、「表現媒体への考慮」、「適用違憲」がどのように論じられているかに着目して整理を行った。WilliamsについてはContent Discrimination and the First Amendment, 139 U.PA.L.REV.615を考察の中心にし、Shiffrinについては、90年公表の著書、The First Amendment, Democracy, and Romanceの、特に1章を中心的考察対象とした。また、E.Volokh, Speech as Conduct, 90 CORNELL L.REV.1277を綿密に検討した。 (2)米国の言論の自由法理の硬質性を一般的に論じる文献、特に比較法的考察を行う文献を綿密に分析した。特に米国のSchauerの諸論文、さらに英国のE.Barendt、I.Hare、カナダのR.MoonやK.Mahoneyの諸論文等を検討した。また、これらに引用されている論文のうち、特に重要なものも収集のうえ検討した。 (3)上記の作業で扱った各論文を文献管理ソフトEndnoteにまとめ、要点を抜き出し、メモにまとめた。 (4)上記の米国の議論を、22年度に検討したAlexander等の二分論の硬質性を重視する議論と比較し、その相違点をまとめた。 (5)22、23年度を通して検討した米国の学説を参考に、わが国の学説・判例の二分論の問題点を明確にする作業を行った。
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