研究課題/領域番号 |
22730028
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
渕 圭吾 学習院大学, 法務研究科, 教授 (90302645)
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キーワード | 租税法 / 情報の経済学 / 租税回避 / 国際課税 / タックス・ヘイブン / インセンティブ / 租税条約 / 内国民待遇 |
研究概要 |
平成23年度においては、前年度の研究成果も生かして、比較的多くの研究成果を公表することができた。それぞれはそれほど分量の多いものではないが、将来の私自身の研究にもつながり、学界全体の研究にもつながる、意味のあるものであると自負している。その多くは、事例研究であり(なお、媒体の性質上科研費の助成を受けたことを明記できない場合があったことをお詫びしたい)、具体的な事実関係を通じて、租税法の機能ないし機能不全を描くことができたと考えている。 具体的には、以下のような研究成果を公表した。移転価格税制に関するアメリカの最新判例を紹介する論文は、前年度の研究課題である移転価格税制についての成果である。『租税法概説』は概説書であるが、本研究の全般にかかわる国際租税法の全体について構想をまとめたものである。公刊したものには脚注が存在しないが、詳細な脚注を付して突っ込んだ検討を行ったバージョンを研究者仲間に配布し、コメントを頂戴した。法人格内部の取引に関する論文は、前回の科研から今回の科研に至る一連の研究の中で得られた一般的な理論をまとめたものである。破産管財人の源泉徴収義務に関して、判例研究と関連論文を公表した。これは一見本研究とは関係がなさそうに見えるが、実際には、源泉徴収のメカニズムが国際課税において鍵となっていること、破産管財人の源泉徴収義務を否定することが国際的な事案における租税の徴収に対して深刻な影響を与えること、の二点により密接な関係が存在する。 本年度の研究実施計画に記した「資産」の概念については、このテーマに関する別の科研プロジェクトにおいて報告の機会を得たほか、有力な研究者による最新の論文をも踏まえて、研究を継続している。法人格内部の資産移転についても、ドイツ法を中心に研究を続けており、次年度中には成果を公表したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的」に記したテーマそのものについて、暫定的な結論を示す論文を公表できたほか、国際課税全般について研究が進んでおり、また、タックス・ヘイブン対策税制についてもこれまで全く指摘されていなかった角度からの研究成果を示せる目処がついたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も本年度と同様に、地道にケース・スタディーを行い、そこから一般的な理論を導けるように努力したい。研究計画は順調に消化できているので、特に変更の必要はない。実務家や他の分野の専門家からのアドバイスをこれまで以上に求めていきたい。
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