平成25年度においては,国際的租税回避に関するこれまでの研究を踏まえて,租税法以外の分野をも視野に入れた研究を進めた。 まず,租税法の分野においては,タックス・ヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の起源を探り,これが同族会社の留保金課税(特別税率)と共通の起源を有することを突き止め,そのことを論文の形で公表した。これは,かつて執筆したタックス・ヘイブン対策税制に関する論文を発展させたものであると同時に,(国際的なそれに限らず)いわゆる租税回避一般についてその否認規定(ないし防止規定)の性質を探求するものでもあった。具体的には,タックス・ヘイブン対策税制や同族会社の留保金課税は,通常の「所得」を課税標準とする所得課税とはその性質において異なるところがあるのではないか,という仮説を提示することができた(なお,上記論文については昨年度脱稿済みと記したが,結局校正段階でかなり手を入れて内容を精査したことを附記しておく)。また、上記仮説を贈与税の文脈で検証する論文も執筆した。 租税法以外の分野においては,研究を進めたものの,残念ながら,現時点では研究成果を論文の形で公表したり,研究会で発表したりするには至っていない。ただし,昨年度の実績報告書に記した憲法と租税法の関係についての論文を本年度末になって公表することができた。内容が国際的租税回避に直接かかわるわけではないが,本科研費の研究成果からアイデアを得て発展させたものであるので記しておく。
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