本研究は、アメリカのニュー・リーガルリアリズムの議論を手がかりに、行政訴訟における裁判官の行動について比較法研究を行うものである。アメリカでは、裁判官の個性が判決に与える影響について、法学からも隣接諸学問からも研究がなされている。本研究により、アメリカと日本、両国での行政訴訟における裁判官の行動についての分析の進展を期待できる。 平成23年度は、平成22年度のニューリーガルリアリズムに関する文献の研究を継続しつつ、ニュー・リーガルリアリズムの周辺の議論を検討することで、ニュー・リーガルリアリズムの主張の妥当性や射程を検討した。裁判官の実際の動機や行動に注目するニュー・リーガルリアリズムの方法論は、法と経済学の観点からも注目されている。そこで、ポズナーによる法と経済学の観点からの裁判官の行動分析に関する議論を検討した。 アメリカ法が判例法である以上、近時の行政法判例の展開をたどることも、ニュー・リーガルリアリズムの主張の妥当性を検討するうえで必要であった。そこで、シュトラウスによるマイルズとサンスティンのニュー・リーガルリアリズムへの批判、エドワーズの裁判官の行動に関する議論、行政訴訟に関するピアースの議論を検討した。 本年度の研究成果については、「ニューリーガルリアリズムとアメリカ行政法」と題する論文として脱稿しており、近日公刊予定である。また、昨年度の本研究の研究成果である「判断過程の統制について-日光太郎杉事件判決再読-」が12月に公刊された。
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