本研究は、アメリカのニュー・リーガルリアリズムの議論を手がかりに、行政訴訟における裁判官の行動について比較法研究を行うものである。アメリカでは、裁判官の個性が判決に与える影響について、法学からも隣接諸学問からも研究がなされている。本研究により、アメリカと日本、両国での行政訴訟における裁判官の行動についての分析の進展を期待できる。 平成24年度では、アメリカのニュ-・リーガルリアリズムについて紹介する論文を公表することができた。その中で、かつてのリーガルリアリズムの議論を振り返ったうえで、現在アメリカで行われているニュー・リーガルリアリズムの主張をあきらかにした。また、アメリカの行政訴訟における裁判官の政治的イデオロギーの判決への影響についても、マイルズとサンスティンの議論を紹介することであきらかにした。 平成24年度では、アメリカ行政法学における隣接諸科学の影響を示すために、上の論文と筆者のかつての研究をまとめたうえで、単著として出版するための準備作業を行った。出版の準備については順調に推移をしているが、平成24年度中に出版することはできなかった。 また、アメリカの行政訴訟における裁判官の行動についての経験的手法を用いた研究に触発されて、日本の行政訴訟の研究においても、同手法を活用することとを検討しているが、いかなる対象についてどのような観点から検討するか、自分自身の考えをまとめることができず、筆者にとってこれからの課題となった。
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