内閣制度の前史である、太政官内閣の形成とその内容について、1867年の職制創定以来、明治14年政変直前の職制第七変までの動きを、太政官沿革誌を中心に、従来の政治史学、憲法史学の論考を手掛かりとしながら、纏める作業を行ってきた。また、その中で、江藤新平に着目し、「江藤新平文書」のマイクロフィルムを購入して、江藤の構想を探求しようと試みている。しかし、史料の読み込みに時間がかかり、論文として纏めて公表する段階には至っていない。 これに対して、研究実施計画の一翼をなす、比較法研究及び現行の日本内閣制度の考察は、いくらかの進展を見ている。現在の日本を取り巻く政治状況は、政権交代以後、そして昨年夏の参議院議員通常選挙以降、大きく変化しており、また、その統治システムの構造も動態的で注目を要することとなっている。本研究代表者も、各種の報道や時事論評的に著される論考を摂取している。 また、上記のような背景から、恩師に強く薦められたこともあって、従来、本研究代表者が行ってきた、内閣制度の比較法史的研究を纏めて一書にまとめる機会を得た。そこで、イギリス、ドイツの内閣制度について、当初の研究論文発表後の変化や、またそれらに関わる学界の成果を取り入れて、加筆を行っている。また、日本の内閣制度について、この十数年来の変動を踏まえた現在の姿について、新たに分析を行い書き下ろす作業を行っているところである。その中で、明治期から現行憲法に至るまでの、内閣制度の歴史についても検討を深めるところになるであろう。
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