研究代表者は、2012年8月末まで、在外研究の機会を得てイギリスに滞在し、文献の検討を行うとともに、当地でイギリスにおける内閣制度の理論と実情に直接触れて考察することができた。 その結果、個別責任(Individual responsibility)のもと、特定の政策について第一次的に責任を負うのは大臣であること、しかしだからといって各省割拠になるわけではなく、首相は大臣の任免権と閣議の運営権を梃子にその政策を大臣に行わせることが可能であること、各省の政策や内部運営に関する事項について、首相府や内閣府の関与がみられるが、それは首相と大臣の信頼関係を基礎として大臣が首相府や内閣府にその権限を委ねているとの法的構成をとることが可能であること、等が明らかとなった。これらの点は、既出の論文に加除修正する中で反映して、公刊予定の書籍の一章に盛り込むことができた。 他方、イギリスにおいても日本の現実政治とそこでの内閣制度の運用の在り方に関心を持ち注視してきたが、帰国後、日本国憲法下の内閣制度について、英独と比較してこれらとの異同を浮かび上がらせるよう努めながら、I首相の組織上の地位と権限、II首相の運営上の権限、III首相の行政各部に対する権限、という視点から、①従来の理解・運用と、②橋本行革における改革の考え方、③その後の10年余りの変化(変わっていない点も含めて)について纏める作業を行った。 これについても、公刊予定の書籍で描き下ろしの形で纏めた。
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