イギリス、ドイツと比較した場合、日本の首相は、組織上の優位性が明確であるにもかかわらず、運営上の地位が脆弱であることが明らかとなった。また、行政各部との関係では、従来、指揮監督権(憲法 72条)の主体が内閣にあり、閣議決定がなければ「指示」しかできないことが議論の中心であったが、この点はイギリスやドイツの場合と大きな違いはないことが明らかとなった。むしろ、首相には各省の組織編制権がないこと、各省の上級公務員の任命権が内閣レベルに存在しないことこそが日本の特徴であり、いわゆる行政割拠主義の弊害を産み出している原因ではないかと思われる。 憲法が明記する首相の組織上の優位性を、内閣の運営にも反映させて、内閣での政策形成における首相の指導的地位を正面から認めるべきである。また、いわゆる各省割拠主義も、憲法上の根拠があるものではなく、組織編制権や上級公務員の人事権のあり方についても再考するべきであると考えられる。
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