平成22年度は、研究開始年度であったため、基本的に、現在に至るまでのヨーロッパの国際私法学における当事者自治の原則について理論的観点から分析した文献及び当事者自治の原則と私的自治の原則との理論的関係性を直接に扱った文献のうち、重要と考えられるものの講読を行った。本研究は、これらの文献講読を基礎として、当事者自治の原則と私的自治の原則の理論的関係性を分析し、当事者自治の原則の意義等の明確化を行うものであり、その点で、本年度は、研究の土台を固める作業を、一定程度実施することができた。具体的には、例えば、Wenglerの学説の検討等を行った。 また、同時に、民法学における私的自治の原則の理論的基盤についても、国際私法学者の観点から再検討すべく、文献を講読した。そして、民法学における私的自治の原則に関する文献を分析する中で、本研究の成果をより優れたものとするためには、議論の大枠としてより幅広く法律学全般における私人の意思の扱われ方を分析し、その中で当事者自治の原則の意義や特殊性を明らかにすることが望ましいように考えられたため、国際私法学における当事者自治の原則と民法学における私的自治の原則との理論的関係性の分析を中心としつつも、他分野の文献の講読等を通じて、他分野における私人の意思に関する研究成果の検討も開始させた。 なお、平成22年度は研究開始年度であり、論文の執筆の前提となる基本的検討を中心として実施したことから、特段の研究成果の公表は行わなかった。
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